全日本ジュニアを3日後に控えたSTCコート。
そこでエーちゃんはたくさんの人とカメラに囲まれ、別種の緊張感に包まれていた。
というのも、カメラが追うのは、当然エーちゃんではなく、その相手。
日本テニス界の至宝、池爽児。
池が急遽来ることになった。
その理由は世界ランク8位を倒す活躍で取材が殺到。
その機に合わせて契約スポンサーがイベントを組んだ。
そのテーマが『日本テニス界を牽引するニューエイジが育った環境』。ということで、STCでジュニア選手と一緒の画を撮りたいということらしい。
そういうことでエーちゃんが一肌脱ぐことに。
しかし、このタイミングで池とやれるのはエーちゃんに取っても願ってもないチャンス。
妙に静まりかえり、異様な緊張感の中始まる試合。
エーちゃんのサーブはワイドへの決して甘くはないもの。
しかし、池はそれを難なくリターンエース。
「池のスポンサーが来るってことはわかるよな。お前にとってまたとないチャンスだよ。映像を通してお前のテニスはさらに多くの人の目に触れることになる。池は15の時には既にマスコミを通して気の早いスポンサーには知れた存在だった。
あの超一流のコーチ陣やサポートチームはその資金で結成されている。海外遠征に最先端の練習環境。ここから先は何をするにも金が必要だ。池はそれを自分の力で掴み取ったんだ」
青井コーチに試合前言われた言葉を思い出しつつ、今の池のプレーを肌で感じ取る。これが夢を形にするということだと。
難なくブレイクされてしまい、1-0。
全日本ジュニアで負けた場合も考え未来予想図を作ったものの、やはりプロになりたいという思いが強いエーちゃん。
池と同じ場所まで行きたいと、思いはより強くなる。
エーちゃんは捨て身のリターンダッシュ。
それが上手くいき、続く池のストレートを上手くボレーで返すものの、それを決め返されてしまう。
今の攻撃は流石に池の予想を超える攻撃だった。しかし会心の攻撃を返されてしまったエーちゃんは笑うしかない。
しかし、スポンサーサイドの目にもエーちゃんは中々の逸材として映っている様子。
「うん。確かに青井君が『爽児とやらせるなら是非』と推すだけのことはありますね。線の細いところはあるけど、それを補う反応のよさと攻撃パターンの意外性がある。そして何より素晴らしく球のコントロールがいい」
「でしょ? あいつはスポーツ選出としては地味な身体と浅いキャリアという不利を埋めるために必死に道を模索し続けてるんです。そこにあいつの几帳面な性格が相まって、意外にオリジナリティーのあるテニスになってきたんです。あんなのが世界に出て強豪を片っ端から倒していったら面白くないですか?」
と、青井コーチはここぞとばかりに、エーちゃんを猛アピール。
そしてそのコーチの言葉に押されるように、エーちゃんは、ショートクロスへのスピン、そこからストレートに強打と会心のチェンジオブペースを決めてみせる。
「よしっ!!」
(へえ・・・・。やるう)
最高のショット決めるエーちゃんに喜ぶなっちゃん。
結局ゲームは6-1で池の勝利。
しかし、今回エーちゃんは初めて池から1ゲーム取ることに成功。
「エーちゃんお疲れ!」
となちゃん。
「ははは・・・・。やっぱ、どうしようもないや」
とエーちゃんも何とも言えない微苦笑。
そんあ二人の肩を叩きつつ「よっ」と池が声を掛けたところで次回<#191 出陣>につづく。
まさかのTV取材、そしてまさかの池。
ちょっと意外な展開でした。
しかし、改めて池とやってみて、プロを目指したいと言う気持ちが強まったエーちゃん。
それにしても、フロリダでやった頃はまともにポイントを奪うことすらできずに負けた池相手に、8か月でしっかりと1ゲーム取ることができたエーちゃんの成長っぷり。
まぁ、あの頃よりはサーブの強化、チェンジオブペースのスタイル確立等々、劇的な成長がありましたからね。
池をビックリさせる事が出来たのではないでしょうか。
そして今のエーちゃんの実力。
スポンサーに対してどう映ったのでしょうか。青井コーチも猛プッシュもありましたし。
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