第3セット、7-6の15-30。
勝利まであと2ポイント。
しかし、転倒のアクシデントから、緒方が役に勢いを増してきている。
決めるなら、ここ。
ここを取って絶対に勝つという強い意志を見せる。
緒方も、ここで勝負つけにきているエーちゃんのその気迫を感じ取る。
今、自分が本当の意味で怪我から解放され、最高のプレーをしたのだから。
しかし、エーちゃんはその緒方の想像を超えてくる。
だから、侮らず、恐れず、身体能力の絶対的有利を活かして確実に仕留めようとする。
緒方のサーブはセンターへ。
これを何とか少しでも深く返すエーちゃん。
そしてそのまま、緒方とのストローク戦へ。
苦しいエーちゃんは、少し、ほんの少しでも余裕があればと、ペースダウンを慣行。
緒方は慌てず自分のペースを譲らず打とうとするが、フォームが大きくなり、そのわずかな差を活かし、クロスへのスピンに素早く反応。
それはいい球だったが、なりふり構わず球威最優先。
ダッシュからのジャンプショット。
それが厳しいコースに決まり、さすがの緒方も返せず。
かと思いきや、これがアウト判定。
これにはさすがのエーちゃんも思わず抗議するが、はっと冷静になり、抗議はやめる。
しかし、今のが入っていたら、15-40なのにと、ショックは大きい。
(いやいやいや・・・・。そんなの考えても何の意味もない。審判のミスなんていつでも起こり得るんだ・・・・。もう考えるの終わりっ! 大体、今のは無理して打った球。入らないのは想定済み!
ここからだ・・・・。ここから緒方君がどう攻めてくるか・・・・。そして俺はどこまで自分のテニスを信じ切れるか・・・・)
緒方も今のショットは審判に救われたことは実感。
でも、今のはリスクが高すぎたということも。
ただし、ああいう捨て身の攻撃は要注意とインプット。
細心の注意で攻撃的に駆け引きをして、確実に取るというスタンスで臨む。
ワイドへの強烈なサーブ。
その一撃で崩せたため、リターンはやや甘く、勝負に出る緒方は前へ。
一気に追い込まれるエーちゃんだが、緒方のショットへの反応は早い。
身体を沈め、ジャンプショットへ。
そう来ると思い、ジャンプショットに備える緒方。
しかし、エーちゃんはここで、意表をつき、ネット際に落ちるスピン。
緒方は片手のバックで返すしかない。
それを直球でストレートに決め、30-40。
先にマッチポイントを握ったエーちゃん。
普通のチェンジオブペースで取れたことに手応え、ガッツポーズを。
(前の渾身のジャンプショットが効いたんだ・・! あれを警戒させた分、緒方くんの対応が一瞬遅れた・・・・。未完成でも力でやれると思わせる抑止力にはなったんだ! おかげで前半、散々やられたチェンジオブペースが甦った!)
青井コーチもミスジャッジの後のエーちゃんのこの攻撃を好評価。
最後の最後でエーちゃんが前に出て、俄然声援が増すコート。
そして、エーちゃんの応援に駆け付けようとするなっちゃん。
そして既に観戦している難波江、荒谷、神田。
(捨て身のショットに捉われすぎちゃいけない・・・・。最高のプレーはできてるんだ・・・・。ここはもう駆け引きしない・・・・。その前に圧倒する)
(これで・・・・最後だ!!)
マッチポイントを得たエーちゃん、決められるか――というところで次回<#232 打つべき時>につづく。
何だかんだ言ってジャッジに抗議するエーちゃんって珍しいですよね。
それだけ重要ポイントだったってことでしょうけど。
僕が覚えているのは、難波江戦の初戦くらい。
まぁ、すぐに冷静になるあたりが、エーちゃんらしいですし。
一瞬胸中でも愚痴りながら、即座に頭を切り替えている辺り、本当にメンタル強いなぁって感じです。
しかもジャンプショットを意識させるだけさせて、あえて普通のチェンジオブペースで挑むとか。
まぁ、これでいよいよ、この試合もマッチポイント。
次回で決着かな?
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