エーちゃんの試合を後にし、なっちゃんが来たのは、清水さんの試合コート。
しかし、観客は静まり返ってしまっている。
その様子に疑問符を浮かべるなっちゃん。
だが、
「なんか、またイメージ変わってきたぞ?」
「うん。空回りしてたけど、ハマってきた・・・・。流れも、この1-4からの4ゲーム連取で完全に変わったな」
そんな観客の言葉で、スコアを確認。
すると、第2ゲーム、5-4と清水さんが逆転をしていた。
そんな清水さんのサービスゲーム。
(闇雲に攻めてもダメ・・・・。守る時はしっかり守る・・・・。攻める時は・・攻める!)
と一気に攻撃に転じようとするものの、ネットに引っかかり、30-15。
(何でも自分で決めるのは怖い・・・・。ミスが全部、自分のせいになるから、胸がぐっと重くなって、その分動きも悪くなる。だから同じ展開で同じミスが連発する。それでも・・)
とミスが出ながらも、果敢に攻め続ける清水さんの強烈なフォアが決まり、40-15。
(・・・・一人じゃ何もできない自分が嫌なら・・、何度、失敗しても・・・・、自分で決めたショットを打ち続けるしかない!)
そんな清水さんの姿勢を感じ取ったなっちゃん。
すると、清水さんもなっちゃんの偵察に気づき、一瞬火花が散る。
(鷹崎さんは・・・・私にないものをたくさん持ってる。でも・・・・、私だって鷹崎さんにないものをたくさん持ってる・・・・。それはきっと・・・・今はコートの上にある・・・・)
そしてなっちゃんの背筋が凍るほど、絶妙なタイミングだったドロップ。
これが決まり、第2セットは6-4で清水さんが大逆転でものにする。
そしてまた一方、センターコートの難波江と荒谷の準決。
荒谷のパワーショットに難波江はドロップで対応。
それは力勝負は終わりと告げるようなもの。
その理由は難波江自信力でもある程度いける自信は持てたが、それだけでは荒谷に勝てないということにもわかったため。
荒谷は自慢の脚で意表をつかれたドロップにもギリギリ届く。
が、速い球で返すのは無理。
それでも上手く返すことで、体勢を五分にまで持っていく。
が、ここで難波江はあえてパワーショットで決めてくる。
それによって、難波江がブレイク、第2セット2-1とする。
(今は決め球で使える程度・・・・。これ以上、力に頼って戦うには、フォームや身体の改造が必要・・・・。でも、荒谷を力でねじ伏せるのが本意じゃない・・・・。大事なのは力でも戦える自信を持って
戦術の幅を広げて・・・・次のレベルに行くこと!)
そう考えつつ、放つ難波江のサーブ。
(パワーテニスってのは、ただ思いっきり打てばいいってもんじゃねえ・・・・。確かにお前は一流のパワーショットを打つようになった。でも、パワーテニスは、そう簡単には完成しねえ・・・・。強
靭な下半身を作り上げて・・・・、淀みない体重移動のタイミングを掴んで・・・・、ブレない体幹を鍛え上げ・・・・、しなやかなスイングをものにして・・・・、延々と打ち続けられる体力をつけて・・・・、そ
して、それらを最終的にどう使うか、コート上で試行錯誤を繰り返し、長い時間をかけて作り上げるもの)
またそう考える荒谷は証明して見せるように、その力で難波江を押す。
(ちょっとした意識の変化で手に入れられるものじゃねえ・・・・。お前が、それを知った上で挑んできている以上、俺は力で負けるわけにはいかねえ・・・・。やれるもんならやってみろ!)
更には、圧倒的なパワーショットで、ポイントを奪う。
(圧倒的・・・・こういうショットに捉われちゃいけない・・・・。こっちなりに、力で挑戦して、ポイントできていれば自信を失う必要はない。プロになって世界の力と対等に戦うには・・・・この戦いで得た自信が絶対に必要になる・・・・。やれてる・・・・。挑戦も、し続けられている・・・・。・・・・僕は未来の自分を信じてる)
荒谷の圧倒的パワーショットを目の当たりにしても、難波江は揺らがず。
第2セットはそのまま1ブレイクを守りきり、6-4で難波江が奪い、タイとする。
そして試合は最終セット、第12ゲームまで一気に進む。
スコアは6-5難波江リード。
そんな中、荒谷の放った強烈なショットは、厳しくもアウト判定。
それによって、カウント、6-7、6-4、7-5で、難波江の勝利。
難波江の決勝進出が決まり、難波江と荒谷は試合後の握手を――というところで次回<#256 最終セット>につづく。
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あれ? エーちゃんは?
この作品で主人公不在ってのは珍しいというか、初めてなんじゃないですかね、ひょっとして。
まぁ、それはさて置き、なっちゃんの向かった先は案の定、清水さんの所。
清水さん、大逆転劇へ向けて、フルスロットルって感じです。
絶好調とかそういう感じではないのでしょうが、少しずつ新しい自分のスタイルを確立しつつある印象です。
そして、なっちゃんの姿を見つけて、さらにヒートアップ的な?
一方の難波江の決勝進出。
まぁ、こちらも順当といえば順当。
とはいえ、どちらもエーちゃんが二度戦って、負けている相手ですからね。
荒谷の可能性も0ではなかったと言えるのかもしれませんが……。
しかし、まぁ、第2セット難波江取ったかと思ったら、最終セットも取ったぜ的なスピード感にはちょっとビックリ。
第2セットの第4ゲームの頭に荒谷の圧倒的なパワーショットを決められた場面とかですが、以前の難波江だったら、1ポイント捨てて感情をリセットしていもおかしくない場面だったのかもしれません。
関東でエーちゃんとやった時に、やはりポイントを捨てずに感情をコントロールする術を身に着けたということなんでしょうね。
なっちゃんに続いて難波江も決勝進出。
次回タイトルが最終セットですし、エーちゃんの試合のほうも巻いていくのかな?
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