タクマさんがエーちゃんの緩急のストロークに予想以上の苦戦。
そこで門馬さんのアドバイスとの練習で身につけたストロークを使うことに。
エサを待つ。
それが、門馬さんが池に対抗するための手段の一つ。
それを実践。
まずは普通に後ろからのストローク、ただし絶対にミスはするなと。
そしてコースはどこでもいいから自然に安定するスピンで、門馬さんサイドのベースライン3m以内に必ず入れて来いと。
必ずと言われても3mなら入るかと、始めたストローク戦。
こっちはガンガン行くと門馬さんは初っ端から強打。
そしてそれをバックハンドで返したタクマさんだったが、門馬さんはその球にダメ出し。
球が遅く山なり過ぎると。
「どんな球も一定以上の球威で返せ。じゃなきゃ今みたいに上からぶっ叩くからな」
それでタクマさんもどういうことか、納得。
門馬さんのテンポに捕われず、全て同じてんぽで。
門馬さんの球に身体の動きを合わせて。
段々コツを掴んできた、タクマさん。
早く動いて、早く備えるのだと。
身体はキツイがそうすることで球は安定する。
そうなると、門馬さんの球もアウトとなる。
が、それも返して来いと。
速攻強打の連打がそうそう続けられるものではない。
しかし、世界のトップ達はこれを入れてくる。
そんなストロークの鬼たちに『こいつはどんだけ追い込んでも、同じように返してきやがる』そう思われるのが第一歩。
それには審判がアウトといっても同じように返せるくらいでなければダメ。
それで打つ球は中央に戻る余裕を持てるくらい速すぎず、相手に攻め込む余裕を与えるほど遅すぎずのもので。
実際タクマさんの打つ自然のスピン球は安定感がある上、意外と攻めづらい。
それでいてタクマさんは合わせているだけのため、リスクは低い。
でも、一定の球威は出ているし、それなりに深いから、攻めるにはリスクが高い。
相手の球に合わせるのに想像力はいらない。
だが長時間、自分の意思を抑えて戦うための体力と忍耐力はいる。
実際ずっと続けているタクマさんはかなりキツイ。
緩い球で時間かせぎもできなければ、打って前にも出られないから、いつまでも気が抜けない。
ただひたすらいつ終わるともしれない、その都度距離も速さも違うストップ&ダッシュの繰り返し。
苦しい所で更に門馬さんの叱咤が飛ぶ。
「苦しいのは耐えろ! 一度テニスからドロップアウトしたお前は――・・・・、テニス選手として根本的に忍耐力が足りねぇ。国を背負って戦う時に一番必要な力が足りてねぇんだ」
好き放題言われて苦しいタクマさん。
とはいえ、段々慣れてきて、ストロークは続く。
しかし、タクマさんに言わせれば、これはただ気合で粘っているだけ。
それでも、門馬さんは世界3位をフルセットまで苦しめた実績がある。
「そして耐えながら待つんだ・・・・。ストロークに自身のある奴らは、球威のある球で決まらなきゃ、次は必ず緩急をつけてくる。速攻強打でダメなら、そうするしかねえからな。その『緩急』の『緩』がエサだ。それが来たら決めていいぞ」
そして門馬さんは、ずっと強打だったところに、一球緩い球を出す。
「食らいつけ!」
タクマさんは即座に反応。
決めるべく、バックハンドでの強打。
しかし、それはアウトになってしまう。
「アウトだ・・・・。タイミングが速すぎる。焦ったら全てがムダだ。そこも忍耐で待って捕えろ。これは意外と難しいんだ。これを一撃で決められるようになるには・・、くり返しやるしかねぇ」
(そりゃ、そうだろうけどよ・・・・)
息も絶え絶えのタクマさん。
そこに門馬さんの一言が突き刺さる。
「じゃあ次は俺の番だ。50回以上ラリーが続いたら、お前のタイミングで緩急の『緩』を出せ」
まさかの50回。
ということでタクマさんは先ほどの門馬さんの役割。
強打で50球、そこで門馬さんとの練習は地獄だと改めて思い知ることになった。
そしてエーちゃんとの試合に戻る。
ラリー戦、タクマさんは無理に前を取ろうとしない。
そこでエーちゃんはサーブの優位を活かして、後ろに釘付けにするコース重視の遅いスピン。
すると遅い球を待っていたタクマさん、これを待ってましたと強打。
これはエーちゃんも予想外のショット。
タイミングを崩され、返した球はネットを越えずに30-15。
タクマさんがストロークで強気に。
遅い球でタイミングを崩されないというよりも、狙い打たれた。
エーちゃんのストロークが簡単に崩せないということでの選択。
待つのは性に合わないものの、最終的に前に出るためにはこれが必要。
これはタクマさんにとっても池対策のものだったが、ここで使わざるを得ないと判断。
エーちゃんもこのゲーム、簡単にキープさせてもらえないと判断。
そしてエーちゃんのサーブ、リターン後、やはりタクマさんは前に出ない。
タクマさんがリターンゲームでしぶとくなるのは怖い。
でもサーブの優位さえ譲らなければチャンスは来る。
タクマさんにいい形で打たせないよう工夫。
(俺はプロとしてずっと体力も忍耐力も足りなかった・・・・。でも今なら、いくらでもお前のテニスに付きあってやるぜ)
エーちゃんは鋭角ショット。
しかし、これも3mのショット、タクマさんは自然スピン球で凌ぐ。
一方のエーちゃんは先ほど遅いスピンを狙われたことで、それをケア。
ということで、今度は高速スライス――という所で次回<#324 プライド>につづく。
うん。
遅い球に的を絞って、それ以外はただ一定のリズムでナチュラルスピンをベースラインで打ち、チャンスを待つ。
タクマさんらしい戦術ではないですが、それだけに有効ってことでしょうか。
門馬さん、また厄介な戦術を授けて。
まぁ、その分、練習は本当にキツそうでした……。
こういう地味でめちゃくちゃハードな練習はタクマさんに一番必要で、また一番有効なものだったでしょうし。
これも門馬さんのタクマさんへの期待故でしょうね、色々と。
厳しい言葉も多かったですし。
我慢強いタクマさんって、もう厄介さが半端ないでしょうし。
とりあえず遅い球に的を絞っている中で、高速スライスがどのくらい有効な球なのかが、今後の試合を占うことになりそうですね。
それにしても苦しい展開が続きそうです。
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