日本代表渡邊さん相手に、第1セットを圧倒的に取ったエーちゃん。
続く第2セットの頭も、積極策が功を奏し、優位に。
一方の渡邊さんは、ダウンザラインとネットでの反応勝負と、自分が攻略できていない武器が二つに増えてしまったことにショックを隠せない。
一つの武器でも足止めされている中、さらに二つ目で攻撃されたら、その効果は単純に倍では済まない。
(やった・・・・。無理してでも成功させたかった理想の展開!)

(第2セットの立ち上がりに用意していたかのような戦略・・・・。新人が俺を相手に6-0で圧倒しても少しも油断や戸惑いが見られない・・・・。ここまでは想定できたってことなのか!?)
ダウンザライン(強)が有効なうちに、強打で攪乱して反応勝負に持ち込む。
これがエーちゃんが渡邊さんを倒すために描いたベストの筋書き。
これはすべてが思い通りにいくことで初めて実現。
さらに渡邊さんが逆転するためにキープが必至のこのタイミングで二つ目の武器を出せたことも大きい。
ここを無理してでもエーちゃんをダウンザラインを攻略し、キープできれば、圧倒された第1セットを断ち切れた渡邊さんだったが……。
エーちゃんの反応勝負を警戒するあまり、最初の武器であるダウンザラインに反応できず15-40とされてしまう。
そうなると、この状況を一変させるには、ファーストサーブから一気に押し切る必要がある。
しかし、それができず、ストローク戦になると、渡邊さんは何がどこへ来るか分からない武器を警戒し、守備位置を下げざるを得なくなる。
下がればその分、どっちの武器へのカバーも可能となる。
しかし、反面これは自身の武器である球威を殺すことになる苦肉の策。
下がった上で、ダウンザラインとネットプレーを警戒するあまり、完全に後手に回ってしまっている渡邊さん。
エーちゃんはそこを見逃さない。

後ろに下がっていながら、無警戒だったドロップ。
渡邊さんも必死に反応し、何とか返すものの、それをボレーで決め、第2セットの頭もエーちゃんがブレイク。
このまさかの展開に、観客も騒然。
そんな中、渡邊さんへの声援が、絶望しかけていた渡邊さんの耳に届く。
その声援のおかげで吉道さんに言われた、代表は日本中に見られているという言葉を思い出す。
(観られてることを忘れるな・・・・。俺は日本代表だ)
吉道さんの言葉を思い出したお蔭で、気持ちを切り替えることに成功。
そして続く第2ゲーム。
エーちゃんのサーブゲームということで、サーブから武器二つを駆使し、エーちゃんが有利に展開。
渡邊さんはここを守備に徹して粘り、最悪の混乱状態から徐々に抜け出すことに成功するも、ブレイクには至らず。
そして続く第3ゲーム、渡邊さんの後方からの粘りが功を奏し始める。
エーちゃんのダウンザラインの効果が薄れると同時に、渡邊さんの球威がモノを言い始める。
そして、渡邊さんがこの試合初のキープに成功。
圧倒的リードしているエーちゃんだが、一つのブレイクが命取りの状況。
武器の効果をさらに高めるために守備位置を限界まで前へ。

これにより後ろに下がっていた渡邊さんとの攻守がある意味バランスの取れたものへ。
この結果、お互いにキープ合戦が続く。
この際、長引いての体力勝負は渡邊さんの望むところ。
一つ取り返せば、逆に有利になると、要所要所で守備位置を定位置へ戻そうと伺う。
しかし、その度に、エーちゃんは二つの武器で命懸けの阻止。
激しい前後の動きを強いられながらも積極的に戦うエーちゃん。
疲労も出始め、判断の誤りから失点する場面も増す。
それでも攻める姿勢を見せ続けることで、掴みかけた勝機を必死に握りしめる。
相手は日本代表だけに、今武器一つを取り下げたら、もう一つも攻略され、一気に押し戻されてしまう可能性が高い。
一方渡邊さんはこの間の間に守備位置を少しずつ上げ、あと少しで定位置というところまで戻す。

しかし、キープ合戦が続き、ここをキープすればエーちゃんの勝利が確定する第10ゲーム。
このままでは間に合わない渡邊さんが勝負に出る。
定位置から踏み込み、渾身の力と技術でのストローク勝負。

しかし、渡邊さんの最後の渾身のショットは、惜しくもアウト。
これで、6-0、6-4でエーちゃんの勝利。
ついに決勝進出へ。

逃げ切ったと、安堵するエーちゃん。
一方で渡邊さんは難波江同様、悔しい敗戦となる。
しかも、その時上の、認めざるを得ない完敗で。
エーちゃんプロ生活史上初、チャレンジャー決勝へ――というところで次回<#433 成長>につづく。
というわけで、渡邊さんとの準決勝決着。
サブタイ的にも、第2セットはもっと接戦になるかと思いましたが、頭をブレイクしたエーちゃんがそのまま逃げ切り。
まぁ、正直言って、スコアほど圧勝というわけでもないのでしょうが、日本代表相手に会心の勝利であることには間違いないですね。
正直なことを言えば、渡邊さん自体は、エーちゃんにとって相性がいい相手とは言い切れない選手だったかとは思います。
如何せん、単純な力と技術の勝負になってしまえば、そのまま押し切られてしまうわけですので。
そう考えれば、あのメンタルアップの経験が活きた試合だったなぁと。
一方で、渡邊さんにとってエーちゃんはというと、これはある意味相性は最悪に近いかと。
もちろん渡邊さんからすれば、実力的にも、ランキング的にも勝てない相手ではないと思います。
まぁ、今回は渡邊さん自身のスランプ、吉道さんの棄権、エーちゃんの急成長とゾーン。
様々な要素が絡み合ってのこの結果でしたが。
それを差し引いても、相性は悪いかと。
基本エーちゃんは守備力が高いですので、渡邊さんの力勝負でも簡単に優位には立てず、結局エーちゃんの術中にハマりそうな気がします。
セットを重ねれば、体力的には渡邊さん有利ですが、エーちゃんノートのことを鑑みると、フルセットでも渡邊さんが有利とも言い切れない。
そして一度戦略にハマると、割りと翻弄されてしまう感があるんですよね。
経験も技術もあるのですが、難波江戦、エーちゃん戦を鑑みると、どうしても。
ですので、エーちゃんは全然勝ちやすい相手という印象は抱かなかったのでしょうが、渡邊さんにとっては苦手意識が刻みつけられたんだろうなぁと。
まぁ、渡邊さんの話はさて置いて、いよいよ決勝という話。
順当にいけば、相手はクリシュナかな?
現時点でのラインキングはクリシュナの方が上ですが、練習試合の戦績は2勝2敗の五分といったところでしたからね。
結構いい勝負を期待できると思うのですが……。
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